経済や金融市場において、経済成長が十分に続いていて景気が活況である一方で、インフレーション（物価の上昇）が抑えられている状況を指す用語です。これは、童話「ゴルディロックスと三匹のくま」に由来しており、物語の中でゴルディロックスが「これがちょうど良い」という状況を見つけるように、経済も絶妙なバランス状態にあるという意味合いが含まれています。
ゴルディロック相場が成り立つ場合、経済成長が持続的で失業率が低く、企業収益も健全である一方で、インフレーションは適度にコントロールされています。これにより、投資家や市場参加者は安定した状況で取引を行うことができ、リスクや不確実性が比較的低いとされています。
ただし、現実の経済や金融市場は複雑で、常にこのような完璧なバランスが保たれるわけではありません。景気循環や市場の変動によっては、ゴルディロック相場が崩れる可能性もあります。
この名前を使うことで「ちょうどよい程度」という概念の理解が容易になり、マーケティング、発達心理学や生物学、 経済学、工学など、他の幅広い領域にも適応されるようになりました。
マーケティング
松竹梅の法則ともいわれ、日本のマーケティング業界で使われている用語です。松・竹・梅の三種類のグレードの商品が用意されていた場合、消費者は真ん中の竹を選ぶ傾向があるという法則です。
例えば定食屋で、値段の順に松定食、竹定食、梅定食が用意されていた場合、安いが粗末な梅定食でなく、豪華だが高い松定食でなく、ちょうどよい値段でちょうどよい豪華さの竹定食を消費者は選びやすいとされます。
認知科学・発達心理学
乳幼児は、単純すぎずかつ複雑すぎない事象に関わろうとします。この効果が乳幼児で観察される場合、理想的な学習モデルから予測される、高すぎず低すぎず適度な可能性の視覚的な配列を見せられた子どもは、他に視点をそらさず、見続けるようになります。
宇宙生物学
「ゴルディロックスの領域」という概念では、ハビタブルゾーン（恒星の周辺で生命が存在可能な領域）のことで、レアアース仮説はゴルディロックスの原理を用い、惑星は恒星や銀河核から近すぎても離れすぎても、生命を維持することができないとするもので、条件にあう惑星は俗に「ゴルディロックス惑星」と呼ばれます。
医学
アンタゴニスト（抑制）とアゴニスト（興奮性）の性質の両方を兼ね備えた物質を呼び、例えば、抗精神病薬のアリピプラゾールは脳の中脳辺縁系領域（急性精神病状態の時にドパミンの活動が亢進する）に存在するドーパミンD2受容体に対してはアンタゴニストとして作用しながら、中脳皮質などのドーパミンが低活動な領域に存在するドパミン受容体にはアゴニストとしての働きを示します。
経済学
経済の緩やかな持続的成長と低インフレ率を言い、市場親和的な金融政策が可能です。ゴルディロックス市場は、消費財の価格がベア市場 とブル市場の価格の間にあるときに可能です。ゴルディロックス価格とはマーケティング戦略の1つで、これ自体はゴルディロックスの原理と直接の関係がないものの、他の競合商品を追いやるために、3種類用意して製品の差別化を行うことで、ハイエンド版、ミッドレンジ版、ローエンド版を同時に用意します。
通信技術
システムの効果を最大化しながら、同時に冗長さや範囲の広さが過度にならないようにするために必要な通信の量と種類、詳細さを言い、多すぎず、かつ少なすぎて通信が不正確になったり、不完全になったりしないことです。
数学
ゴルディロックスのゾーンとは、三次やさらに高次の多項式、たとえば ƒ(x)=x³などにおけるほぼ水平に見える領域、”shelf area”をいい、厳密な定義としては、一次式の傾斜が±15°を越えない部分のことです。ただし、他にも異なった変化率を使う場合があります。
